今川焼
「おいっ。店預けてる間、お前お客さんに何か古いもん出してねえだろうな。」
「古いもん?知らねえよ。」
俺に対しての一回り高いトーンとは違い、まさに親子の会話といったところか…
初めて男から人間味を感じた。
「妹さんが腹壊したらしいぞ。」
「えっ……」
申し訳なさそうに俺の方を向いた。
「あ、いや別に…ウチの妹が変な物食ったのかもしれないし。ただ他のお客さんからクレームきたら大変だなあと思って……」
何故か俺は必死にフォローした。
あまりにも男が困った顔をしていたから、罪悪感を感じざるをえなかった。
「詫び入れようにも店のもん食って腹壊したかもしれねえなら店のもん差し出すわけにいかねえしなぁ…お前ちょっと行って謝ってこい。」
流石にそこまで事を荒立てるつもりはなかった。
「ホント大丈夫ですっ。そんな気を遣わなくても」
そんな俺の言葉を遮るように、
「いや、謝りに行かせてください。」
男は真剣な眼差しで応えた。
引くに引けなくなった俺は…
いつしか男を連れて家までの帰路を歩いていた。