今川焼
余韻
一通り他クラスを徘徊し探してはみたものの、それらしき姿は見当たらなかった。
狭い人脈を駆使して知人らを尋ねて回ったところ、そんな名前の奴は知らないと誰もが口にした。
手っ取り早く見つけたかったため学年主任にも聞いてみたが…
「先生、吉本って何組ですか?」
「よしもと?」
「男です。」
「よしもと…よしもと……」
「生徒の名前くらい覚えてくださいよ。」
「俺は覚えてるぞ!でも…悪いがよしもとなんて奴は知らんなあ。」
「マジっすか?」
「いないと思うぞ、そんな奴。」
昨日いた人間が…
今日にはいない?
…どうなってるんだ。
「どうかしたのか。」
「お前よしもとって知ってる?」
「誰それ。」
「今川焼屋の、ほら超絶イケメンの。」
「えっ!アイツってウチの学校なの?」
「そうらしいんだけどな。誰に聞いても知らないって言うんだよ。」
「そりゃ何かの間違いだろうよ。アイツが学校にいたら目立つだろし、何より女子達が黙っちゃいない。」
もっともな意見だった。
純に言われるまでもなく、そんなことは分かってはいたが…
放課後になっても有力な情報を得られなかった俺は諦め、帰り支度を固めた。