今川焼
 
膨れている純の面倒を請け負い、恵と涼をその場から帰した。


余程恵と話したくなかったのだろう。

2人の姿が消えた途端に純は口を開いた。


「お前って涼と付き合ってたっけ?」

「年頃の男女が歩いてるだけで付き合ってるとか勘違いするなんざ、お前パートのおばちゃんぐらい脳味噌ヒマだな。」

「意味わかんねえツッコミすんなよ。」

「ていうか俺達より問題はお前らだろ。」

「はぁ…」


ため息が何かを物語る。


「…何があったんだよ。言ってみろ。」

「別に。何もない。」

「俺の心配を無駄にするな。」

「ホント何もないんだって…何もないからムカつくっていうか。」

「お前正気か?」

「お前もおかしかった恵を見ただろ!」


誰も触れずにいた忘れかけていた記憶を、純の一言は一瞬にして掻き乱した。


「…心配でさ、あれから。」

「…………」

「それなのに恵の奴、終わったことグチグチ言うなって。しつこいとか逆ギレしてきて…俺も頭にきて、そんでケンカんなった。」


当事者ではないにしろ、すべてを見てきた俺がケンカの仲裁などできる筈がない。


「…恵の様子が変なのか?」

「いや普通だよ。普通すぎるくらい普通、それが逆に心配っていうか…」

「考えすぎだ。うちの妹だって今じゃ何ともないって顔してるし。」

「そうだけど…」

「それに多感な時期の娘だ。色々と人には言えない悩み事の一つや二つ抱えてて当然だろ。男なら遠くから見守ってやれよ。」

「お前いくつだよ。」
 
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