今川焼
どおりで名簿から探し出せなかった訳だ。
先入観で"よしもと"を苗字だと思い込んでいたが…
…まぎらわしい…
…よくよく思い返してみれば表札にも古川と謳ってあった気がしないでもない。
「ていうか、お前学校来てないだろ。」
「何で?」
「お前くらいの有名人なら絶対ファンクラブの一つや二つあってもおかしくないだろうよ。」
認めたくないが事実だ。
「…2年になってからは全然行ってない。それに根暗グループで影薄かったからね、俺。」
「イジメ?」
「うん。」
「マジか…」
「ウソ。」
「ぁん?」
「怒んなよ。」
「しょうもない嘘つくな。」
一度好青年というベールを剥いだ義心(ヨシモト)は無邪気な奴のようだ。
今では嫉妬の欠片も湧かない。
それよりも俺が気になったのは…
「その眼鏡どうにかなんないの。」
「俺、遠視だからさ。」
「それ掛けて接客してたら絶対流行ってなかったと思うぞ、店。」
そんな眼鏡を掛けた状態の義心に気付いた俺も凄い。
これが千里眼というヤツか。