今川焼
本当に読めない奴だと、思った矢先に飛び出した義心の一言。
その威力は強烈で、あたふたとしてしまいそうな口をこじあけた。
「……そういうこと言うなよ」
「何が?」
「つまんねえとか、遊んでみないことには分からんだろ。それに…それはお前が決めることじゃないし。」
「あ、ああ……そうだな。じゃあ遊ぼう」
何をムキになっているのか自分でも理解に苦しんだ。
それでも一瞬、ふいに見せた物憂げな横顔を放っておけなかったのかもしれない。
反応から見て軽口を叩いただけとも取れたが、それにしても寂しいことをサラッと言えてしまう心情は……
やはり本音だったのではないだろうかと、妙に勘繰ってしまう。
「お前いっつも何してんだ」
「ゲー」
「それ以外で」
「それ以外?…それ以外それ以外……」
そんなに難しい質問かよ。
「…あそこ行くか」
「あそこ?」
「うん、あそこ。」
行き先を把握すると、義心は路地を曲がりフェンスによじ登った。
「えっ、こんな路地裏に何の用が?健全な男子高生なんで危ない遊びはちょっ」
「いいから早く」
飛び越えた義心に遅れをとらぬようにフェンスを、跨いだ拍子に有刺鉄線が太股に食い込んだ。
「ッ……」
「おいおい、まだいっぱい柵越えるよ」
どんな危険地帯!?
「…ああ、わかった。お前ゲーマーで引き籠もってるイメージ変えようとムリに野性味あふれる行動とっちゃってる感じだろ?そういうのいいから。こう見えて俺も体育会系男子じゃないし、お前とは気が……」
フェンスを越えた先にある雑居ビルの遥か上を見渡す義心。
「……って、聞いてないし。」
しばらく空に目をくれた後、一人無言で頷き何かを見据えたかのようにパイプに手を掛けた。
そのままビル伝いに天まで伸びるパイプに足を掛け……
「ふんっ」
昇っちゃったぁぁぁ!?