今川焼
少し空に近づいてみれば、俺の住む町は意外と小さかった。
まるで小さい頃に遊んでたブロックみたいに、翳した手は向かいのビルを容易く掴めた。
「……俺さ、昔っからブロックを壊してばっかいたんだよね」
「ブロック?」
「人間とか動物とか建物とか、おまけに植物まで…決められたスペースに置くだけのブロックに納得いかなくて何回も壊して。自分の思い通りの世界にしようとしてみたけど、できなくてウンザリして、そんなことばっかやってたら折角買ってやったのに恩知らずがぁ!!って親父にキレられて…それからは触ってないけど」
「…………」
「今は大人ではないにしろ成長しちゃったから、そんなこと考えるのも青臭くて恥いけど……」
この町がブロックなら納得できる。
思い通りにいかないから壊すだなんて子供じみた思いも消え失せた。
「…なあ、あそこの工事してるとこって何ができると思う?」
義心の指差した先に目をやると、そこには3年くらい前から一向に完成の気配を感じさせない駅前の工事現場があった。
だいたい近隣住民ですら何が完成するのか知らない、できるのかすら危うい。
「都市伝説じゃないけど、地下に眠ってる埋蔵金目的に成金が土地を買い占めたんだろ。でっけえ穴掘ってるみたいだし間違いないね」
「そうなのか」
「でも、作るとしたらアミューズメント要素を多分に含んだ施設がいいね」
「遊園地には狭すぎだろ。坪的に」
「そんなら隣りの商店街一帯をブッ壊しちまえば」
「俺の店を潰す気か!」
架空の話でマジギレされたよ。