今川焼
 
あっという間に闇が町を覆い尽くした。

長いようで早く過ぎる時間の中、途方もない話で語り尽くした。


不思議と心が落ち着いた。

童心に還るには若すぎる年頃だが……




それは懐かしさに浸るような時間だった。


「お前は今川焼屋というビジネスで成功して市長に当選しろよ」

「いきなり当選ですか」

「そうしたあかつきには、あの場所に俺達の娯楽施設を建設する。企画やデザインは俺がやるからな」

「楽なポストだなオイ」

「そのためにも……学校来いよ」

「それとこれとは話が別だろ」

「別じゃない。市民の支持を得るためにも手近な学校から押さえるんだよ。今のうちに媚びまくってりゃ撒いた種も花を咲かせる」

「飛躍しすぎだし。そもそも俺が市長になること前提だし」

「夢ないんだし、ちょうどいいじゃん」

「お前が決めるのなし」


俺達の未来……




その響きは漠然としすぎていて

あの頃と同じで、不確かなものだ。


これから作られてゆくもの、消えるもの

生きてゆくもの、死んでゆくもの

その全てに未だ実感が湧かない。




……それでも時間は流れていくわけで


「寒ッ」

「帰る?」


遠い未来を思い馳せるより、こうした身近な現状を切り変えるので精一杯だ。


「まだ心の準備が…」

「準備?」

「行きはよいよい帰りは怖い」

「帰りは普通に階段で降りるけど」

「…ん?お前いま何て言った?」

「階段」

「あるの?」

「そりゃあるでしょ」

「へぇー、ああ、そーなんだー……」




いっそコイツの時間を止めてやろうか。
 
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