今川焼
福音
 
翌日の学校は奇妙なくらい平穏だった。


物理の授業中、お調子者の須藤の額に顧問の白河が投げたチョークがクリーンヒットしたことくらいだろうか。

それ以外にパッとしたこともなく



いや、それは全く何よりなことだが……





「なあ、なんかスゲエ奴が学校の前にくるんですけど」


内心、これから起こるであろう事件の予感に胸が踊った。


「どいつだよ」

「ほら、校門の前に停めてあるヤン車から出てきた…」


ヤン車から出てきたというだけあり、その中身も中々のものだ。

学園ドラマにありがちなOBによる在校生を軽くシメるという、突発的な強制イベントでも起こるのだろうか……



なんか鉄パイプ持ってるし



「俺シメられるかなー」

「安心しろ純。お前みたいな草食動物は眼中にもないさ、狙われるとしたらリーゼントの教頭だ」

「確かにアイツのヘアスタイルは常に威嚇してるよな」

「そういうことだ」


ざわついていたのは俺達だけじゃない。

きっと他クラスも、職員室一同も、学校総出で野次馬に回っている状勢だ。


ここで木刀でも持って金髪のハゲの頭に一発キメればヒーローになれるだろうか。

それとも警察からみっちりと説教を食らうだけだろうか。



まあ実際ムリですけどね



そんな勇者は……


「なんか遅刻してきた奴が絡まれてる……いや絡んでるのか?」


存在したみたいです。
 
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