今川焼
金髪ハゲの取り巻きが車内から降りてくると、その一人を囲むようにして円陣を組んだ。
近眼の俺には黒い米粒が仲良く並んでいるようにしか見えなかった。
純が言うには相当ヤバい状況らしい。
「3対1じゃ一溜まりもなくね?」
その割りには楽しそうに眺めている純。
さほど代わり映えもない場面転換を逐一俺に報告してくる。
「あ、ハゲが唾吐いた。隣りの奴も吐いた…と思ったらミスって自分のズボンに付いちゃったのか?めっちゃ拭いてる」
お前は俺の眼鏡か
そんな声に耳を傾けるよりは幾分か、拙い自分の目で見た方がマシだろう。
俺は鋭い目を更に細め、凝らした先を必死に視認する。
「……ダメだ。ぜんっぜん見えねえ」
米粒は米粒だった。
4人中3人が煙草をフカしているのが何となくぼやけて確認できた。
しかし、どこをどう見ても俺には炊きたての米粒にしか映らず、諦めて純の実況に頼ることにした。
「なげえなぁ、まだくっちゃべってるよ」
「公開カツアゲでもしてるのか?」
「…と思ったら、2人が正座しだした」
「正座?いつの間にヤンキー座りは廃れたんだよ」
「なんか知らねえけど金髪のハゲ、めちゃキョドってるんですけど…」
純の言葉をそのまま具体化すると、頭の中には硬派で隆々とした肉体を兼ね備えた高校生とは思えない老け顔の男を想像した。
うちの学校はブレザーだが、その男は何故か学ランを着こなしていた。
「…正座してた2人、あんなヒョロっとした弱そうな奴に土下座してるよ」
頭の中を白紙に戻した。