今川焼
義心に昨日の余裕は感じられなかった。
「これ、明らかに打ちどころ悪かったら死ぬ距離だろ!」
「ここしか逃げ場はない」
「……マジかよ」
「いくぞっ」
まるで経験者が語るような口振りで促してはみたが……
「おわぁあああ!!」
……実際に飛び降りたのは初めてだった。
しかし、以前からサボるのには適した最高のスポットだと目をつけていたのは確かだ。
……爪先は完全に殺られたが。
「はぁ~……」
「…………」
「助かった」
「昨日の仕返しか?」
「助けてやったんだから文句言うな」
「助かってから言えよ……」
呼吸を整えていると、屋上の扉が勢いよく開く音がした。
──ガチャッ、キィー………
「来た」
「シッ」
死角ではあったものの、細心の注意を払い息を潜めた。
…………キィー、バタン──
まるで自分のことかのように、心臓が停まるかと思った。