今川焼
 
一方的な対抗心を剥きだしにした昨日から一夜明け…




翌日、俺は一人の心当たりをあたった。


「あ、いたいた…りょう!」


渋沢涼(シブサワ・リョウ)という女の着ぐるみを着た男、ではないにしろ限りなく男に近い女。

彼女なら俺の意見に賛同してくれる筈。




…というより、自分を慰めたかった。


「率直に聞く。」

「いきなり何?」

「最近流行ってる今川焼屋のことだけど、涼はどう思う?」

「ああ、らしいね。うちのクラスも…私のお姉ちゃんですらハマってるし。」

「うん。どう思う?」

「どうって?」

「美味いとか、カッコいいとか。」

「別に、興味ないね。甘い物も嫌いだし。それに…」

「それに?」

「私、ああいうキラキラした男は苦手なのよね。」




その言葉を待ってましたー!!




「…ああ、涼さん最高ですよ。もういっそ結婚してください……」

「やめて、近寄らないで。」

「この世の女共が今川焼屋に取られても、涼だけは俺の側に……」

「ごめん、アンタは生理的にムリ。」


例え俺の男としての存在が危ぶまれたとしても、奴に色目を見ない女も実在するのだという安心感が、俺の憤りを緩和する。

例え俺の男としての存在が危ぶまれたとしても…




「…それより、ちょうど良かった。気になってたことがあったんだよね。」


涼は一辺して、真剣な眼差しで口を開く。
 
< 5 / 35 >

この作品をシェア

pagetop