今川焼
一方的な対抗心を剥きだしにした昨日から一夜明け…
翌日、俺は一人の心当たりをあたった。
「あ、いたいた…りょう!」
渋沢涼(シブサワ・リョウ)という女の着ぐるみを着た男、ではないにしろ限りなく男に近い女。
彼女なら俺の意見に賛同してくれる筈。
…というより、自分を慰めたかった。
「率直に聞く。」
「いきなり何?」
「最近流行ってる今川焼屋のことだけど、涼はどう思う?」
「ああ、らしいね。うちのクラスも…私のお姉ちゃんですらハマってるし。」
「うん。どう思う?」
「どうって?」
「美味いとか、カッコいいとか。」
「別に、興味ないね。甘い物も嫌いだし。それに…」
「それに?」
「私、ああいうキラキラした男は苦手なのよね。」
その言葉を待ってましたー!!
「…ああ、涼さん最高ですよ。もういっそ結婚してください……」
「やめて、近寄らないで。」
「この世の女共が今川焼屋に取られても、涼だけは俺の側に……」
「ごめん、アンタは生理的にムリ。」
例え俺の男としての存在が危ぶまれたとしても、奴に色目を見ない女も実在するのだという安心感が、俺の憤りを緩和する。
例え俺の男としての存在が危ぶまれたとしても…
「…それより、ちょうど良かった。気になってたことがあったんだよね。」
涼は一辺して、真剣な眼差しで口を開く。