今川焼
「今日は休んでるんだけどさぁ。この席、磯谷(イソガイ)さんっていう女の子なんだけど…」
隣りの席を見つめ、言葉を濁す。
「その子どうかしたの?」
「昨日から様子が変だったの。何て言うか…目が虚ろで、私の問い掛けにも無言で、体調悪そうで…」
「まあ、たまにはあるだろ。」
「でも、その子ね。毎日異常な量の今川焼を食べてたのよ。毎回鉄板にあるだけの今川焼を買い占めてたらしいし。放課の間もずっと今川焼食べてて…」
「…それって、ただの過食症?」
「そうかなぁ?」
どの店にもいるものだ。
商売に荷担して、その先に何を期待しているのやら…
「…心配するな。流行りっていうものは花火と一緒。一時一際輝きを放ち、いずれは儚く散りゆく運命…」
「何ですか急に?」
「私の名は時代の先駆者。とでも言っておこう。」
「相談する相手間違えたわ…」
その時は冗談半分に聞き流していた。
というより気にも止めていなかった涼の話に、何かしらの一貫性を感じ始めたのは数日後のこと……
「ちょっと話があるんだけど…」
思えばこの時を皮切りに、全ては始まったような気がする。