今川焼
結局俺のしてやれることは純を励ますことに尽きた。
力なく枝垂れる恵を抱えながら家まで送ると、俺達は母親に事情を話した。
心配して呼び掛ける母の声にも娘はだんまりと口を閉ざし無表情を決め込む。
芯の折れた体を支えていた手を離すと、純はそっと母親に預けた。
心許ない様子で別れを惜しむと…
「…これで良かったのかな?」
ぽつりと呟いた。
掛ける言葉は幾らでも思いついたが、そのどれもが気休めでしかないことを察し飲み込んだ。
こんなにも得体の知れない何かに恐怖を感じたのは生まれて初めてだろう。
それが現実に起こり得たことにも…
「じゃあな。」
「おう、また明日学校でな。」
「……あのさ、」
「ん?」
「大丈夫だよな…恵……」
「大丈夫だって。明日には元気になってるさ。」
Y字路に差し掛かった時、俺は本心を偽った。