【超短編】暗闇の果て
庭へ出ると、花の香りがした



遠くから子供達のはしゃぐ声がする



私は転ばぬよう、慎重に庭を歩いた



やがて水の音や、竹で作られた獅子威しが鳴る



お屋敷の庭園だ



私は庭園と離れとを仕切る塀に手をついた



お屋敷は塀で囲まれ、私の離れは更に囲まれている



庭園への塀は一枚



村への塀は二枚



村への繋がりはとても遠かった



「二の姫もそろそろ嫁に出さねばならぬな…」



父上様の声が聞こえてきた



「そうですね…、四の姫もお隣の村の問屋にと言われましたわ」



母上様…



「家は姫ばかり…跡継ぎには恵まれなかった」



「申し訳ございません…」



私は?父上様…



「よいお天道様だ…これなら米も育つだろう」



「はい」



「村では竜神様を鎮めると生け贄を出そうかまで話していたそうだ…
下々の輩の考える事は、どうもわからぬ」



「左様で…」



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