【超短編】暗闇の果て
「姫…、姫」
「おまえさま?」
私が布団から身を起こすと、おまえさまがゆっくり肩を支えてくれた
「姫…お身体は如何ですか?」
「おまえさま…」
「姫?」
「おまえさまは何処のどなたなのですか?」
「姫…」
「教えてはいただけないのですか?」
「姫、それはいずれ解ることです」
「いずれ?」
「そう…、姫、この先どんな事があっても私と共に添い遂げられますか?」
「おまえさまと一緒なら…」
私の手を冷たい手が包む
「では、姫。その時に迎えに上がります。その時に全て解るでしょう…」
「おまえさま…」
ぎゅっと強く抱きしめられた
外は雨
そうか…おまえさまはいつも雨の中を歩いてくるから、手が冷たいのですね…
おまえさまがまた髪を撫でる
「私の美しい人…
今日は薬水を持って参りました…さあ、お飲みください」
「おまえさまの為なら」
そう言って口に含んだ水は、不思議な味がした…