桃色ドクター【番外編】
俺の友達の中にも、長年付き合った彼女からいきなり別れようと言われたやつがいる。
そいつが、俺の前で泣いていたことを思い出す。
その時俺は言った。
『お前、もうときめかないって言ってただろ?ちょうどいいじゃん』
『何、泣いてるんだよ』
『お前、他に女いるだろ』
友達に言ったその言葉達を、
今、自分自身に投げかけてみる。
そうだよ。
俺だって、もう香織を女として見ていなかった。
一緒にいて楽だったし、うるさいこと言わないから都合が良かった。
結婚する気なんて特になかったし、
ガキでもできたらいつか結婚するかって程度の気持ちで。
大事にしていなかったじゃないか。
浮気ばっかりして、
香織の気持ちなんて考えようともしなかった。
何も言わないからって
何も感じていないわけじゃない。