桃色ドクター【番外編】
俺は最低な彼氏だった。
自然に涙が出てきた。
泣いたからって同情するような女じゃないことはわかっている。
でも、今はこの涙だけが、香織を引き止める道具。
「香織…… 俺にはお前しかいないんだよ」
冷めた目で俺を見ていた香織が、少し優しい表情に変わった。
香織は好きな男ができたと言った。
そして、雅也にはいっぱい女がいるからいいでしょって。
何もかもバレてたってことか。
気付いているのに、気付かないフリをして
俺と暮らしてくれていた。
好きな男ができて当然か。
ぎっくり腰になった彼女をほったらかして、
会社へ行くような男。
しかも、
その翌日に浮気しちゃうような男。
バレンタインの夜に、別の女と過ごすような
史上最低な俺。
捨てられて当然か。