桃色ドクター【番外編】
マンションの部屋の前。
同居している男が出たって構わないとさえ思った。
チャイムを鳴らしたが、誰も出なかった。
どうしてだろう。
心が穏やかになった。
ずっと求めていたのに、どうしてもこうする勇気がなかった。
ずっと心のどこかで、このままじゃいけないと思っていたのに、逃げ続けていた。
香織。
ねぇ、まだ俺のことを愛してくれている?
もしそうなら、ずいぶん辛い想いをさせただろうね。
ごめんね。
香織。
ずっと連絡しなくてごめん。
君の後輩だという女性の言う事を鵜呑みにしてしまったが、もしかしたら俺も君も騙されてしまったのかも知れないね。
でも、もう大丈夫。
俺は迎えに来た。
君を……
香織の部屋の前でしゃがみ込み、香織の帰りを待った。