桃色ドクター【番外編】
いつの間にか、仕事でもプライベートでも自分自身をさらけ出せなくなっていた。
愛しているはずの女性にさえ。
そんな俺の前に現れたこの女性は、本当の俺を呼び起こさせてしまいそうだ。
粘土で覆われた俺。
その粘土をはがされそうな予感。
なぜか素の自分に戻ってしまいたくなる。
腰にサポーターを巻きながら、俺は平常心を保つ為に必死だった。
「大丈夫ですからね…ヘルニアではなさそうなので、安静にしていれば、すぐに治ります」
いつもの診察を心掛ける。
俺はそっと平野香織の腰に手を当てた。
だめじゃないか。
何をドキドキしているんだ。
俺は医者。
患者に対して特別な感情を抱いてはいけない。