桃色ドクター【番外編】
「手当てって言うでしょう。手を当てるだけで、随分楽になるんです。どこか触られているだけで、不思議と痛みもましになったりしませんか?」
目を閉じていた平野さんは、そっと目をあけ、俺を見た。
目が合った瞬間、目をそらされた。
嫌われているのだろうか。
防御線を張られている気はしていたが……
こんなに魅力的な女性だから、当然彼氏もいるだろう。
もしかしたら結婚しているかも知れない。
「ご主人か彼氏に、こうして背中や腰に触れてもらってください。治れ、治れって念じながら触れることが大事ですから」
俺の発言に怒りをあらわにした平野さん。
ムッとした顔で俺をにらむ。
怒った顔もまた綺麗だ。
怒るということは、もしかしたら失恋直後だったりして。
小さな期待をしている自分がばかばかしい。
俺にはちゃんとした婚約者がいるっていうのに。