桃色ドクター【番外編】
俺が由美子と結婚指輪を選びに行った店で、貸し出ししてくれていた指輪をたまたまつけていた日に、平野さんはそれを見た。
そりゃ誤解するよな。
「あの日はね、たまたま結婚指輪の貸し出しサービスでつけていただけなんです。仕事柄、指輪が邪魔になるかも知れないと言ったら、指輪屋さんが試しに1日貸してくれたんです。まぁ、指輪を付けることに抵抗はなくなりましたが、あなたに見られてしまった」
軽い男だと思われるかも知れない。
結婚が決まっている男が、色目を使うなんて。
「春に結婚が決まっています。これって、独身とは言えないかな」
客観的に俺を見ているもうひとりの俺がいた。
お前、何がしたいんだ?
本気で結婚やめる気なのか?
俺だってわからない。
どうしたいのか、これからこの恋がどうなるのか。
ただわかっているのは、今、目の前にいるこの人を
俺のものにしたいって強く思っているってこと。