桃色ドクター【番外編】
「俺も好きです。どうしようもなくね」
視線をそらそうとする平野さん。
俺はそんな平野さんの顔を覗き込み、視界に入る。
平野さんも俺を見つめた。
「でも、君の腰は治ってしまった。だからもう会う理由がない。どうする?」
「私は不倫は嫌です。やっぱり婚約者のいる人をこれ以上好きでいることはできない」
由美子と結婚することはできない。
でも、由美子との間に愛情がないわけじゃない。
結婚を決めるほどの相手だ。
そこに『安らぎ』や『ときめき』がなかったとしても、やはり愛し合ったふたりであることは確か。
別れると一言で言っても、すんなりと行くとは思えない。
別れようと思うと、由美子の良い部分ばかり思い出し、自分を責めてしまう。