桃色ドクター【番外編】
「彼氏と別れてくれよ」
自分勝手だとわかっている。
俺には婚約者がいて、すぐに別れることができないのに、平野さんには別れて欲しいなんて。
ただ、耐えられないんだ。
平野さんが、俺じゃない男に抱かれるなんて。
違う男の為に料理をしたり、洗濯をしていると思うと、胸が苦しくなる。
すぐにでもその男を殴りたいと思ってしまう。
「私は別れます。でも、瀬名先生は別れちゃだめですよ」
俺のツボを知っている。
俺が夢中になってしまう言葉ばかりを言う人だ。
俺は、少し微笑んで、息を吐いた。
「一時の気の迷いで、将来をだめにしないでください」
また強い口調で平野さんは言った。
俺が左を向くと、平野さんも左を向く。
目を合わせようとしないのは、本心じゃないからだ。