━好きになってはいけないヒト━
「ふーん。それで?」
「それでってなによ~。だからよけてって言ってるでしょ?」
「知るか」
「じゃあ一瞬で良いよ」
「ふん、なら通してやるよ」
「ホント?!やったあ」
「なんでそんなに喜べるんだよ」
「今日もう少しで観たいテレビが入るのよ」
「へぇ」
とか言って心配になったあたしは、
時間を調べてみた。
――16:57
時計はそうなっていた。
「は――っ!?」
「…っ…んだよ!」
「ちょ、ちょ、マジでよけて。時間ヤバいっ」
「へーへー」
とか言いつつよけてくれないこの男。
「邪魔してる?」
「ちげーし(笑)くっくっく」
「なにが面白いのよ…。あたしは全然面白くないっ!!!」
「――うわっ、こえ~っ」
「は・や・くっ」
「わかったわかった」
「もー、とか言ってよけないんでしょ?」
「ふっ、いい加減よけてやるよ」
って言って、ホントによけてくれた。
「ありがとね、じゃあ」
あたしは出口をから出ようとした。
「……ちょ…待て」
「……なによ。
…きゃっ…えっ?
……ん…っ」
手を引っ張られ、急に男の顔が近付いてきたと思ったら…
あたしの唇と男の唇が…重なりあってる。
え.と、これって―――
…キ…キスだよね?
あたしキスされてる!?
「っ…いやぁーっ」
大きな悲鳴を出して、あたしは男を突き飛ばした。