━好きになってはいけないヒト━
「――…参ったって?」
……ああ、壱樹が鈍感で良かった。
「……なんでもない。
ってか時間!チャイム鳴るっ」
「んなの別に構わねぇって」
構わないとか、そういう問題でもないんだけど。
授業サボったりとか滅多にしない…いや…、するか、あたしも一緒に(苦笑)
でも、そんな壱樹でも、こんな発言は珍しい。
「あたしか壱樹のどっちかが1番最初に自己紹介なんだよ。わかってる?」
「……わかってるけどさぁ」
「――なら教室戻ろ?
この話は終わりっ」
強引に話を終わらせ、教室に戻ろうとするあたしの遥か遠くを見つめたまま、壱樹は動かなくなって。
「……壱樹~?あたし先戻ってるからね」
そう一言呟き、ドアの方へ進んで、あと一歩のところで廊下に出れたはずなんだけど……
出ようとしたときにパシッと壱樹に腕を掴まれて、あたしは行動出来なくなった。
「――待てって」