蜜愛

そして。

呼ばれるがままあたしは、彼に会いに来た。

喫茶店で、と待ち合わせしたのに、

『人目に触れるのはまずいんだ』

と彼はすぐに場所移動を提案した。

――ここから別々に、ここへ。

彼がテーブルの上で紙ナフキンに書いたホテルの名前を見て、

あたしは、

『カラオケの部屋じゃダメなの?』

……とは言えなかった。

ここがあたしの二つ目の隙でもある。



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