蜜愛


窓の外に目をやって、ドキッとした。

この雨、いつから降っていたんだろう……

オレはまだ、あの日の光景が忘れられず、ふと気を緩めるとすぐにでもあの瞬間に呼び戻されていた。


どうしてあの時、助けに行かなかったんだろう。

オレの耳には、

タマコの

『助けて』

という声がはっきりと聞こえていたのに。


抱きしめた“セイタ”くんを、そのまましっかりと

抱き続けることの方が

彼女を救うような気持がしていたのも、事実だ。

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