蜜愛
俺は差し出されたその右手から、

ティッシュを受け取るだけでは堪えきれずに、


手首を掴み引き寄せて抱きしめた。

我慢、できなかった。

俺は蜜柑を、妹として認める事が我慢できなかった。


洗いざらい、ぶちまけてしまいたい。


俺たちは、兄弟なんかじゃ、なかった。
俺は、家族として心の片隅でいたわることより

めちゃくちゃに吸い付き、かじり、貫き、弄ぶことで

血縁よりも強い愛が自分の中にあると確信していた。

あまりにも、蜜柑を苦しめ陵辱した行為だったとしても。

どんなテを使っても、関係を終わらせたくなかった。

ずっと、俺に虐められて逃げられなくしておきたかった。


……なんてことを、ベラベラ言ってしまう舌があったら。

俺は、あの日の蜜柑を取り戻していたのだろうか。


蜜柑は始め驚いて身を縮めカラダをかたくしたが、

『お兄ちゃん。……悲しいですか。私がこんなふうになっちゃって』

と。

こわばっていた力を抜いた。

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