蜜愛
蜜柑が記憶を失い、私は少しほっとしていた。

私に振り回された

これまでの人生を

全て記憶して生きるには

蜜柑も、私も


あまりにも辛かった。


大輔と蜜柑を引き離すためにも、

離婚しかなかった。

私は、何も見えない幼子のような蜜柑の手を引いて、あの家を出ようとしたけど。

ホテルを泊まり歩く私たちはすぐに連れ戻されて

匡哉に、俺が出ていくから、ここで生活しろと言われ

彼の匂いがしみついたこの家で蜜柑と二人暮らすことが

最高の彼の復讐だったのだと


思い知る。


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