蜜愛
目が見えなくなると。

今度は嗅覚が発達してきて。

つくづく僕は自分が動物だなって思う。

もう、人間じゃない。
やめてる。


でも、格好悪いコトじゃないんだ。

彼女の前でだけ。

仕事の……

大嫌いな上司、
取引先の口が臭いあいつ、
生意気に僕を見下すあの女のコ達、
ヌルイお茶、
暑い職場のあの席、
印字も反応も何もかも遅いコピー機、
しょっちゅうフリーズしたまま画面の変わらないパソコン、


そんなものが全部彼女の舌で脳みそごと消毒されていくような……

そんな感覚。


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