COLORS【緑】c:lover
……えっ?

ポーン……ポーン……。
フェンスに当たり跳ね返ったボールは行き場を失い地面に転がる。

「お前、なかなか筋がいいぞ。時速百キロってとこかな」

「……蒼波」

「きっと来るって思ってたから」

もしかして……待っててくれたの?

「試合は……?」

「もちろん勝ったよ。俺がいるんだぜ、負けるハズないだろ。お前こそどうだったんだよ、試合」

「勝ったよ、向こうのエースに!」

「そっか……流石、世海だ」

「ああ~見たかったな、私も蒼波が野球しているとこ」

「……仕方ねぇな。そんじゃま、勝利祝いに見せてやるよ」
そう言うと彼は先ほどのボールを拾った。

「……」

「よく見てろよ」

「うん」

蒼波はマウンドに立つと足元の土を二回ほど右足で払ってならした。
初めて見る、彼の投げる姿。

誰もいないこのグランドなのに――。
観客の大歓声に包まれているような心地にさせられる。

不思議。

大きく振りかぶると右手から力いっぱいボールを放つ。

鳥肌が立つのは久しぶりの感覚だった。
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