カナリア
2
健太郎は休日出勤の為に春の日差しを浴びて平日の通勤ラッシュとは違った社内で肩を落としていた。
横浜線の八王子行きの急行に乗っていた。
成瀬を過ぎ、会社がある町田で降りる為に立ち上がった。
特別具合は悪くない。
休日出勤といっても、報告書の訂正をして提出するだけである。
『横溝〜!』
健太郎が振り替えると駅の外の備え付け灰皿の前で同期の坂本がタバコをくわえながら右手を挙げた。
『お前も休日出勤か?』
『おう。昨日までの出張報告書を提出しにな。』
坂本はタバコを消し、健太郎に並んで歩き出した。
『顔色悪くないか?』
坂本が健太郎の顔を覗いた。
『ああ…親知らずが疼いてな…』
健太郎は顔をしかめて言った。
『歯医者に行くにも今日は日曜日だから休みだそ?』
『そうなんだよなぁ…』
『…あ!日曜日でも受け付けててる所あった!!』
『本当か?』
『おお!確か、町田駅から歩いて10分程度だったかな…会社からも近いぞ。後で説明してやるな。』
『頼むわ。』
坂本は頷いた。
健太郎と坂本は自社へと入って行った。