カナリア


この日は、いつもより患者は少なく夕方には診療は終わった。

加奈子はロッカー室で白衣を脱ぎ、帰路へと向かった。

医院を出た所で加奈子は健太郎と鉢合わせた。


『あ!先生!さっき診察を受けた横溝ですが、ハンカチを待合室に忘れてしまって…』

『あ、じゃぁ今お持ちしますね。』

加奈子は笑顔で答えてまた医院に戻った。




健太郎のハンカチは受け付けで保管されていた。

ハンカチを手にし、健太郎の元へ行くと健太郎は右頬をさすりながら突っ立っていた。


『お待たせしました。こちらで良かったですか?』

加奈子がハンカチを差し出すと健太郎が受け取り笑顔を見せた。


『はい。どうも、すいませんでした。』

健太郎は丁寧にお辞儀をすると駅の方へ向かって行った。


加奈子は健太郎の背を見送り、自宅マンションへと向かった。





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