カナリア
加奈子が医院を出たのは、夕方17時過ぎだった。
外は昼間の猛暑を若干引きずり、蒸し暑かった。
医院近くのカフェへ入った加奈子は店員の案内を断り、健太郎が待つテーブル席へと向かった。
健太郎は一杯目のコーヒーをわずかに残し、加奈子に気づいて右手を上げた。
『お疲れさん。』
『健太郎さん、早かったですね。』
『今日は金曜日だからね。仕事は早く切り上げるに決まってるだろ。』
健太郎は加奈子を見て微笑み、伝票を手にして立ち上がった。
『今日は美味しいイタリアンの見せを見つけたからそこへ行こう。』
『うん。』
加奈子は健太郎の後を歩き、町田駅に向かって歩きだした。
その様子を見られている事も気づかずに────