カナリア
3
『痛いっ!!健太郎!離して!!』
苦痛そうな口調で女性が言うと、その女性の腕を掴み、歩いていた健太郎が振り返った。
『どういうつもりだ?』
『は?どうって…彼氏の浮気相手を懲らしめてたのよ。』
息を荒くして女性が言った。
『お前とはもう無理だって言ってるだろ!』
『一方的にね。あたしは認めない。』
『もう、前みたいには戻れないんだ。解ってくれよ。』
『何もわからない。』
女性は頭を振った。
目には涙をうっすら浮かべて、充血している。
『俺に優への愛情がない時点で俺等は終わってる。』
健太郎は目を伏せて言った。
『………何でよ…』
"優"と呼ばれた女性は俯き、消え入りそうな声を発した。
『ごめん………………』
健太郎は頭を下げた。