world end
家に着くとゼノが夕飯を用意していてくれた。
久方ぶりの暖かい夕食に私は安らいだ。
「ほら、フォルセの好きなワイン、買っておいたよ」
「ありがと、でも私、赤の方が好きなんだよね」
「悪かったな、白しか売ってなかったんだよ」
「ふふっ、冗談よ。ゼノが買ってくれたものなら何でもいいわ」
そう、なんでもいい。
このワインとて、別段、味が気に入っている訳でもない。
初めてゼノに薦められて飲んだワインがたまたまこれだったのだ。
だから好きになった。
記念すべきワインだからこそだ。
ゼノという理由があれば何でもいい。
私は今、ゼノのためにあるのだ。
だから守る。
ゼノの世界を。

「少しはトドィスにいられるのか?」
夕食の会話中に何気なくゼノが聞いてきた。
「数日後には発つわ。サツキの捜索にあたらないと」
「また、テスランドに行くのか?」
「そうね、捜索部隊を連れていくようだから、色々と準備が必要だから少しは留まるけど」
そう言いながら、ゼノ特性の子羊のリゾットをぱくつく。
「なら、その間にちょっと一緒に遊びに行かないか?」
「え?」
驚いた私はすっとんきょうな声をあげた。
久しぶりに聞いた、遊ぶという言葉。
そんなゼノの一言でとても心が暖まるのを感じた。
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