world end
ゼノが無理矢理私と休みを合わせた。
おかげで二人、近くの海岸へ行く事が出来た。
私は砂浜に座りボンヤリと海を眺めていた。
まだ少し肌寒い季節なので、泳ぐ気にはならなかった。
潮風が吹く。
私の長い髪が顔にまとわりついて邪魔くさい。
怪訝にそれを振り払うとゼノはふふっと笑った。
「何?」
睨み付けるようにゼノを見る。
「あの時もそうやって嫌そうな顔をしてたなって思ったんだ」
あの時…
鮮明に覚えてる…あの日。
「ねぇゼノ…」
私は傍らに立つ彼に声を掛けた。
「ん?」
彼は私の方を振り向く。
私は変わらず海を見続けていた。
水平線が空に混じる。
波音がただただ繰り返される。
相変わらず潮の臭いは変わらない。
こんなにも普通の日常が近くにあるのに…私はもう、それに触れる事すら…難しい…。
「私…」
そこまで言って止めることにした。
こんな事言っても仕方がない。
変わらない。
どうなる訳でもない。
ただの自己満足だ。
私は首を左右にふった。
「ううん、なんでもない…」
「何だよ、きになるじゃん」
「何でもないよ」
私は立ち上がりゼノの腕にしがみついた。
顔を傾けゼノの肩に付ける。
波は変わらず揺れていた。
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