ケータイ

ノリが派手で目立つ分、アキはちょっと地味すぎな感じ。でもいかにも清純。

「よっ、ノリじゃん」いきなりの知らない男登場に目をそらすアキ。

さりげなく腰を下ろす。ちらっとアキが、座るの?と嫌そうにしたのを見逃さない。

結構な警戒心。

ノリが普通に紹介するのを遮る。

「アキちゃん、だよね?初めまして」

「はい…」

「レイジと呼んで。今は大学生。どうしても君に会いたい男がいてさ」

「…」

「…アキちゃん合コンとか嫌い?」

「…あんまり。人見知りするし」

「俺も?」

ノリがさりげにフォロー。
俺の大学や親が警察の偉いさんの事、国家公務員一種を取る予定な事。

アキも今、医者になるのに必死らしく、何度も凄いを連発してきた。

「じゃあ、俺、家庭教師しちゃう?タダでやるよ、アキちゃんなら」

「…でも。ちょっと」
「俺も勉強しないとまずいしね。二人なら張りもでるし。ど?」

「…じゃあ、試しに」
「了解!じゃ明後日どうかな?」

「…大丈夫ですけど」
「大学、案内するよ。図書館が結構良くて」
「あ~!ずるい~。ノリも行きたい~」

アキにわからないように、ノリの太ももを軽く撫でる。

「ノリは勉強嫌いだろ?また飲みに連れていってやるよ」

撫でられた太ももをギュッと閉じながら、ちょっとトロンとした顔でうなずく。

「アキちゃん、じゃ明後日、3時に大学に来て」

レイジはそう言って立ち上がりながら、今日一番のポイントを言う。

「あ、携帯ある?」

アキはすんなり携帯を出す。

「大学広くてわかりづらいから、はい、赤外線」

つられてアキも赤外線。

じゃね、と二人に手を振りつつ、今日は上出来、と思うレイジ。

アドレスも番号もわかったし、ま、こんなもんかな。
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