ケータイ

「じゃ今日はこのぐらいにして。パスタ、ご馳走するよ!」

「いえ。夕食は家で食べますし、用もありますから。気持ちだけ」
「あ、用って?もしかして無理やり誘ってしまったかな」

「いえ、違いますよ。いきなりなんで、いつもあの人」

「あの人?あ~、彼氏かぁ」

しまった、というアキ。慌てて訂正。

「彼氏じゃ、ないですよ。仲良くしてもらってるだけです」

「ヘェ~、アキちゃんに思われる男なんてどんな男なんだろ~」

「普通ですよ…。そう普通」

じゃまた。とアキは帰っていった。

彼氏じゃない、普通。アキの様子。
ちょっと迷惑そうな、知られたくなさげな。そんな表情だ。

もしかしてアキは別れたいのかもしれない、なんとなくだけど。
もしそうならば。
ただ、アキの心がちょっと気になる。

誰にも本心を言わない、常に一人。頼らない。

医者になりたいのも、一人で生きて行けるからだといった。
結婚もしないだろうし、とも。

前にノリも言ってたが、同年代が怖いと。

アキは何があったのだろうか。
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