ケータイ


大学からちょっと離れた所にあるイタリアンは雰囲気がよく、こじんまりしていてレイジは珍しく気に入っている店だ。

お任せコースを頼む。
食前酒には軽い白ワイン。

アキは意外にも抵抗なく飲む。
コースにも慣れている。
これは小柳の影響だろう。

ワインを一本入れた。
そこまでは、と少し躊躇するも口をつけるアキ。

「結構いけるんだね」
「意外、ですよね」

「まぁね。でもそっちの方が好きかな」

「そうですか…」

「って、もう敬語止めない?」

「いえ、なんとなく年上の方にはなってしまうんです」

「じゃ、ちょっと親密になれるようにワインもう少し飲んじゃお」
「…ダメですね。将来警察幹部なのに」

アキはケラケラと笑う。
「今はただの学生だから、いいのー。それにイタリアンでワイン抜きの方が寂しいでしょ」

「それはそうかも」

「あっ!今敬語~」

アキは真っ赤になって違います、違います、ただ、その…

「俺の勝ち~」

「勝ち負けじゃありません」

二人して笑った。
思ったより楽しい。アキはカワイイ。ただ好きにはならない。

なってはいけない。
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