ケータイ


本能の赴くままに抱いた。

アキも熱っぽい身体で応える。

二人が何も考えずにお互いを愛しみ、大切にする、だけど激しいセックスだ。

何度も求めた。

アキに自分をぶつけながら、これは愛なのか?何度もレイジは自分に問う。

頭の片隅にレナがいる。振り払うようにアキにぶつかる。


子供のような抱きかた。レイジは制御出来ずにいる。

なんなんだ、一体。
アキなのか、レナなのかどちらでもなく、イライラしてるのか。


「激しかったね」

「えっ。あぁ、ゴメン」

「レイジってもっとクールに抱くかと思ってたから、ビックリしたかな」

「…なんか訳わかんなくなっちゃった、かな」

「…でも私を好きじゃないでしょう?」

アキはベッドから起き上がりバスタオルを巻き付ける。

「何故?好きだから抱くんだよ」

「…違うかなぁ。あればぶつけて来ただけで、セックスじゃないよ。お互い」

「お互い?」

「そう。私も好きな人いる。絶対に結婚とか出来ない相手。でも付き合っている」

「それって…?」

「誰かに言いたかった。聞いてくれるかな?」

アキはバスタオルを巻いた身体で冷蔵庫からビールを取り出し、レイジに渡しながらベッドに腰かける。


「出会いは突然だった。相手は凄い年上で、社長。お金も地位もある人。でもとっても寂しい人」

「どこで出会ったの?」

「図書館の帰り。雨が降っていたの。傘がなかった私は閉館後の玄関で雨宿りしていた。車が通りかかって、濡れますからどうぞって声をかけてきた」

「……」

アキはビールをゴクリ、と飲みながら話す。
「絶対にそんなの乗らないのに、何故か乗ってしまった。今もあの気持ちはわからない。…とても紳士できちんと送ってくれた。帰りに名刺をくれて、また会ってくれませんか、と言われた」

レイジは黙って話を聞く。
思っていたアキと小柳との付き合いとは違う。戸惑う自分がいる。
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