ケータイ
秘密
貰った名刺をしばらく見つめ続けた。書かれた番号もすっかり暗記してしまった。
何をしていても気になる日々。
「…でね、一週間して電話した。直ぐにわかってくれて、会いませんかと誘われた」
「…うん」
レイジはアキの背中を眺めながら聞きいる。
「…会って食事して。不思議と会話も弾んで。…送って行きますよと言われて、私は断ったの。もう少し違う所に行きたいと」
「…彼は無言でホテルに連れて行ってくれた。…勿論セックスもしたよ。優しいセックスだった」
「…それって、その…」
「レイジが思うようなのじゃないよ。本当に好きになってしまったの。でも彼はそれは無理だからって。…で、愛人になった」
「愛人…」
「そう。なんでも買ってくれるし、お金もくれる。なんなら医大の学費も出すって」
「…凄いね。愛人か」
「でも何も受け取らないの。欲しいのはあの人だけだから。そういうととても困るけど」
「何故?愛人なら受け取ればいいのに」
「…あの人ね、娘さんが自殺してるの」
自殺?!
小柳の娘が!
「…娘さん、ちょっと悪い友達がいて、一緒に出会い系やっててね。援助はしなかったみたいだけど、悪い男に捕まっちゃって、全部バラスって。しかもレイプされて…。写メも撮られて。それで自殺したの」
なんだって!それじゃあ小柳は娘にされた事をしてるじゃないか!
「…復讐したいって言ってる。出会い系の男は結局わからなくて、警察も自殺だからってうやむやで…。それからあの人いろんな出会い系サイトで女子高生に援助していたみたい」
「…アキ。その彼氏って小柳っていうだろう?」
アキはビックリした顔をしている。
「なんで、なんで知っているの!」
「…そいつは、小柳は…。俺の知り合いをめちゃめちゃにした…」
「…めちゃめちゃ?」