ケータイ
「あぁ、元々俺は雇われてアキに近づいたんだ」
「近づく?私に?」
「そう。小柳が一番大切にしてる小柳の弱点だからさ」
「…私に近づいて何をすると?」
「…小柳を潰す為に証拠を…」
「あぁ、そういう事か。でもそれじゃあダメね。小柳の弱点は私なんかじゃないし、どういう作戦か知らないけれど、あの人捕まってもいいみたいよ」
「…捕まっても?」
「そう。娘さんを亡くしてからはどうでもいいみたいで、自暴自棄だよ。だから女子高生に援助しても結構悪い事したみたいだし」
「…俺の知り合いも、そうだ」
「小柳はね、出会い系を憎んでる。それを使う女子高生も。だから、娘と同じく苦しめばいいと思っている。…でもその反面寂しくて悲しくてどうにもならない気持ちがある。それを私が癒してるんだよ」
「…アキ、お前は娘のかわりなのか?」
「…うん。あの人にとってはそう。だからあまり私を抱かない。ただ抱きしめて、酔ってるときは泣くよ。娘さんの名前をいいながらゴメン…って」
「…多分、彼は娘さんみたいな子を作りたくないんじゃないかな。憎む気持ちがあれば人は死なないって言ってたから」
レイジは何も言えずにただ聞いていた。
小柳の過去。今の心境。
アキの気持ち、レナの気持ち。
皆の思いが複雑に絡まる。
レナは小柳に憎しみを。
小柳は娘を死においやった男を、サイトを。
アキは小柳の娘のかわり。
どうしたらいいんだ。