アンナ
ポケットの中で皺くちゃになっていた地図のとおりに長細い通路を抜けると、
天井からシャンデリアを吊るし、真っ黒い壁の至るところに赤い薔薇の花を飾った
一際目立つテナントが目に入った。
「ここだ…」
店内を取り囲むようにして通路沿いにずらりと並べられた商品棚の間を縫って、その奥へと足を踏み入れる。
すぐ正面に小さな黒いレジカウンターがあり、そこに立つ長身の女性店員と目が合った。
「いらっしゃいませ」
「あ…ハイ」
何となく居心地の悪い気がして、頬が引き吊った。
だけど、向かって右奥の壁に目的のものを見留めた瞬間、
私は思わず「あった!」と声を張ってしまった。
頬が緩み、全身の血管が一気に拡張する。
心臓がどくどくと脈打つのがわかる。
黒いサテン生地の上から同色のレースをかぶせ、
真ん中に銀色の十字架とそれに絡まる蔓薔薇の刺繍を施したネクタイ。
雑誌の広告で一目惚れした新商品。
絶対、絶対、「あの人」にはこれが似合う筈なのだ。
天井からシャンデリアを吊るし、真っ黒い壁の至るところに赤い薔薇の花を飾った
一際目立つテナントが目に入った。
「ここだ…」
店内を取り囲むようにして通路沿いにずらりと並べられた商品棚の間を縫って、その奥へと足を踏み入れる。
すぐ正面に小さな黒いレジカウンターがあり、そこに立つ長身の女性店員と目が合った。
「いらっしゃいませ」
「あ…ハイ」
何となく居心地の悪い気がして、頬が引き吊った。
だけど、向かって右奥の壁に目的のものを見留めた瞬間、
私は思わず「あった!」と声を張ってしまった。
頬が緩み、全身の血管が一気に拡張する。
心臓がどくどくと脈打つのがわかる。
黒いサテン生地の上から同色のレースをかぶせ、
真ん中に銀色の十字架とそれに絡まる蔓薔薇の刺繍を施したネクタイ。
雑誌の広告で一目惚れした新商品。
絶対、絶対、「あの人」にはこれが似合う筈なのだ。