-雪女郎- 千寿
「・・・」







雪洞は静かにうつむいた。








そんな雪洞を、織閖は悲しそうに見つめた。










「それで・・・以前美楼閣にいらっしゃっていたみたいなのに、姐さんの処にはいらっしゃりませんでした。」











「他の姐様方の処に通っているという噂もございます。」










「それをお聞きになって…最近は、他のお客様がお見えになっても会おうともせず。」










「泣き叫んでおいでです。」










松は、すがるような瞳で雪洞を見た。









「吉原一と詠われる、雪洞花魁なら何かご存じのはずと思い・・・このようにご相談申し上げているんです。」










松の可愛らしい丁寧な言葉づかいに、雪洞は何一つ返すことができなかった。
< 37 / 80 >

この作品をシェア

pagetop