-雪女郎- 千寿
「織閖。」








雪洞が去ったのち、女将は織閖に問いかけた。









「千寿を失い、昔からの親友をも失う雪洞の気持を考えたのか?」









その言葉には、多少の怒りが含められていた。









「はい。」










織閖は正面を見据えたまま答えた。









「母親と姐をあのような形で失い、ようやく見つけた居場所も、凪雛との別れにより、崩れ落ちてしまった。」










「これからもその傷と孤独さを、身に染みらせて生きて行くんだ。」









織閖は、静かに口を開いた。
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