-雪女郎- 千寿
「歳は上。だが・・・千寿は雪洞を姐さんと呼んだことはなかったな。」









文を懐にしまいながら、言った。








「姐さんと呼んでしまったら、自分より雪洞が上だと認めてしまうことになる、と千寿は言っていました。」










「そうか・・・」










「でも、随分前から認めていたんだ。お前の存在を・・・」










女将は立ち上がった。









「真実を知ったところで、お前がどうするのかわっちは知らない。」











「真実をすべて知る?そんなことは無理だ。」









「秘密があってこそ、美しいのさ。真実は・・・」









女将は、雪洞に背を向けた。








「お待ちください。」









雪洞が、呼びかけた。
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