あなたがいてくれた‐いじめ‐

今日は満月。

薄汚れたカーテンの隙間から、そっとこちらを窺っている様に見える。

私は満月は好きだ。

満月を見ていると、痛みが全て消えてしまう。

満月に現れる兎は、天使の様にも見える。

なんとロマンチックなのだろうと、

自分でも正直びっくりするところはあるが。

でも悪くはないと思う。


そうだ、昔おばあちゃんに教えてもらったことがある。


『満月の次の日は何かが起こると言われてんだよ。』

『何か?』

『そう、何か。きっと優衣にはいい事が起こるよ。』


亡くなる前まで、ずっと私はいい子だと褒めてくれた。

満月の次の日は本当にいい事があった。

いじめのリーダーが風邪をこじらせ、

その日だけいじめがなかったことがあった。

母親が帰って来なくなったのも、満月の次の日だった。


最近は曇りが多く満月は見られなかった。

でも今日は満月だ。



今の私に、やって来るものはあるのだろうか。

きっと無いだろう。


そして、まぶたを閉じた。

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