√番外編作品集
雪が降り続ける中、彼の足が止まった。
止まったのはバス停で、白砂海岸を抜けて、鳴海の方へ向かう北宮バスだった。
「どうしたの」
立ち止まる彼を見上げると、滑り込むようにして雪化粧したバスがやってくる。
彼は何も言わず、ポケットに入れた私の手を引いてバスに乗り込んだ。
寒いからバスで帰りたいのかな。
早く私を家に送って、今日を終わらせて……さっさと別れたいのかもしれない。
でも、私の家も、彼の家の前もこのバスは通らない。
温かいバスの中、白く曇った窓ガラスを、手袋で擦った。
「どこ行くの」
「白砂海岸。冬の海岸ってあまり行かないだろ」
彼はそれだけ言って私の隣についた。
まだ、今日が終わりになるには早い。
私の気持ちが彼に伝わったのだろうか。
暫くバスが揺れて、暖かな空気に冷たくなっていた指がゆるく溶けていくような感覚になる。
「ねぇ、潤。私のこと……」
声をかけると、彼はいつの間にか眠っていた。
こちらに肩を預けていて、小さな彼の吐息が耳に入ってきた。
「私のこと、特別に好きにはなれないの……?」
答えてくれないことが分かっていたけれど、私は眠っている彼の前髪を軽くいじり続けた。
彼はピクリともしないで、眠り続けていた。
『梅山白砂前です、東山海岸公園へお越しの方はこちらでお降り下さい』
バスのアナウンスで、私も彼も目を覚ました。
彼は先にバスを降りると、出口で傘をさして私が降りてくるのを待った。
彼の傘は、オシャレだ。
外側は黒い普通の傘だけど
開くと内側には青空が広がってる。
置いていかれないように、彼のツイードのコートのポケットに手を入れる。
ポケットの中に入れていた彼の冷たい手と交わる。
彼はそっと私の手を握りかえしてくれた。
「砂浜まで行くと、海にさらわれるから」
彼は言って、近くの流木に腰掛けた。
流木には雪が積っていたが、彼の一蹴りで雪は散る。
傘を肩にひっかけるようにして、2人くっついて海の方を見た。
止まったのはバス停で、白砂海岸を抜けて、鳴海の方へ向かう北宮バスだった。
「どうしたの」
立ち止まる彼を見上げると、滑り込むようにして雪化粧したバスがやってくる。
彼は何も言わず、ポケットに入れた私の手を引いてバスに乗り込んだ。
寒いからバスで帰りたいのかな。
早く私を家に送って、今日を終わらせて……さっさと別れたいのかもしれない。
でも、私の家も、彼の家の前もこのバスは通らない。
温かいバスの中、白く曇った窓ガラスを、手袋で擦った。
「どこ行くの」
「白砂海岸。冬の海岸ってあまり行かないだろ」
彼はそれだけ言って私の隣についた。
まだ、今日が終わりになるには早い。
私の気持ちが彼に伝わったのだろうか。
暫くバスが揺れて、暖かな空気に冷たくなっていた指がゆるく溶けていくような感覚になる。
「ねぇ、潤。私のこと……」
声をかけると、彼はいつの間にか眠っていた。
こちらに肩を預けていて、小さな彼の吐息が耳に入ってきた。
「私のこと、特別に好きにはなれないの……?」
答えてくれないことが分かっていたけれど、私は眠っている彼の前髪を軽くいじり続けた。
彼はピクリともしないで、眠り続けていた。
『梅山白砂前です、東山海岸公園へお越しの方はこちらでお降り下さい』
バスのアナウンスで、私も彼も目を覚ました。
彼は先にバスを降りると、出口で傘をさして私が降りてくるのを待った。
彼の傘は、オシャレだ。
外側は黒い普通の傘だけど
開くと内側には青空が広がってる。
置いていかれないように、彼のツイードのコートのポケットに手を入れる。
ポケットの中に入れていた彼の冷たい手と交わる。
彼はそっと私の手を握りかえしてくれた。
「砂浜まで行くと、海にさらわれるから」
彼は言って、近くの流木に腰掛けた。
流木には雪が積っていたが、彼の一蹴りで雪は散る。
傘を肩にひっかけるようにして、2人くっついて海の方を見た。