√番外編作品集
「適当に付き合うことはいくらでもできるけど、そういうのはおかしいってことは分かる」

潤の声は、寒さにあてられたのか

少しだけ細くて低い。

「少なくとも、お前……だけじゃなくて、女子はそういうの嫌がるだろ」


そうだ


だから私


『本当』に彼に好きだと言って欲しくて、もう失いたくないから永遠にしてしまいたくて

そうしなければ不安でしょうがなくて。


「付き合う、なんて約束や形がなくたって、守れるものや好きでいられるものなんていくらでもあるだろ?」


潤は強いね

約束なんて必要ないんだもん


そんなトコロがとても好きで、でも、とても辛いよ


私は弱すぎて、約束や形になるものがないと

どうしても不安で、どうしても不安で


彼もまた、そんな私の不安を、『別れよう』という答えで受け入れた。




今、この雪空の下で青空の下にいるのは2人だけ


特別『だった』2人。




そしてそろそろ青空の下には、1人だけになる。



傘が少しゆれて、積った雪が滑り落ちた。



彼が立ち上がる。


それが、お別れのサインだとわかって、涙が堪えられなかった。


「……潤!」

「?」

「私たち、でも、でも、付き合ってたんだよね?」

こんなこと確認するなんておかしいけど

お願い。
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